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2018年09月21日

海軍袴下考

恥ずかしながら帰ってまいりました、寛永です。
この一年本当に色々あった為すっかり趣味から遠ざかっていましたが、久々に更新してみようと思います。今までの投稿分もそろそろ画像の一新をやりたい所ですね。

さて、題名の通り今回の更新は袴下に関するものです。3分で読めますよそれでは、下士官兵袴下を見て行きましょう。
『白綿フラネル製、腰並足首ニ紐ヲ付ス』
海軍袴下考
生徒等の袴下も同形です。

海軍袴下考
腰紐は右腰で縛っています。この個体は廃掃除服や中着からの改造により製造された袴下の為、白綿フラネル製ではなく白色綾木綿製です。各所に古い縫い跡や記号が残っています。

海軍袴下考
海軍袴下考
鳩目や記号の断片。未記入ですので、在庫となっていたものを素材にしたものと思われます。



続いて下士官兵夏袴下です。
『晒薄綾木綿製、腰部ニ紐ヲ付シ前割部釦止、半袴』
海軍袴下考
海軍袴下考


海軍袴下考
釦は雑紐釦が二つ付いています。腰紐は前で縛ります。

海軍袴下考
記号は右尻(腰部裏面右方上部)に縫い付けです。




そして、上記の通り生徒と航空予備学生・予備生徒にもそれぞれが存在します。
生徒・予備学生予備生徒袴下は
『フラネル製他ハ下士官兵用ニ同ジ』
海軍袴下考

海軍袴下考
附図では書かれていませんでしたが、股は前後共二重となっています。

海軍袴下考
生徒等袴下も右前の紐を左腰の穴に通し、後ろに回してから右腰で縛ります。



生徒夏袴下は『晒薄綾木綿及縮晒木綿製ノ二種、其ノ他ハ下士官兵用ニ同ジ』
海軍袴下考
海軍袴下考
晒薄綾木綿製ですが、股間は釦式ではありません。ある時期から釦式ではなくなったのか、それとも最初からなのかは今の所未確認です。

海軍袴下考
下士官兵用と同じく右尻です。菱形の記号が誇らしい?

海軍袴下考
左腰。右の腰紐をこの穴に通し、右腰で左の腰紐と結びます(脚絆みたいですね)。右だけ長いのはその為です。



予備学生予備生徒夏袴下は『晒薄綾木綿及縮晒木綿製ノ二種、腰ニ径二七糎(二.七の誤植か)長二〇六糎ノ紐、足首ニ径一、七糎長七六糎ノ紐ヲ付ス(以下寸法』

要は袴下と同形状と言えるのですが、冒頭で説明した改造袴下は元の地質的にこっちかも知れません。ただ、数的には圧倒的に前者の方が多いのでなんとも言えませんが…。


なお、生徒・予備学生予備生徒夏袴下は昭和19年官房需第一四一号特例により晒薄綾木綿製のみと限定されています。最近よく出る夏袴下も皆晒薄綾木綿ですね。



★下士官兵 猿股

海軍袴下考
残念ながら実物はありません。末期に海軍に従軍した歌人・渡辺白泉が、「新しい 猿又欲しけり 百日紅」という歌を残しています。
完全な憶測ですが、地質や形状が似ている事から以前規格低下品として紹介した夏袴下は猿股、或いはそれらを兼ねる被服かもしれません。大戦末期についてはまだまだ考察が必要です。



★(下士官兵)夏袴下はいつから?
昭和13年勅令第687号における海軍給与令改正で、夏袴下が被服物品定数表に登場します。これにより下士官、兵、軍楽兵など全てに二個ずつ支給される事になりました。昭和17年の勅令第820号による海軍給与令改正においても変化がなく、袴下・夏袴下とも二個支給というのがスタンダードになったようです。これは海軍給与令施行細則でも確認する事が出来ます。(ただし、各条の規定によっては一個の場合もあります。)→例:海兵団初回入団時等
では、13年以前ではどうだったのでしょうか?勅令本文を見ると、『袴下ノ次ノ項ニ左ノ一項ヲ加フ』とだけあり、新しく「夏袴下」を制定したと言うわけではないようです。(もっとも、付図の類を省いた可能性も考えられます。)
例えば、昭和4年の「倫敦海軍会議随員付下士官被服ノ件」において追加貸与すべき品の中に夏襦袢二個・夏袴下四個・半靴一組が計上されています。(夏襦袢は既に二個支給品として支給されている為この個数となったか) 曰く『特殊被服』だそうですが、一体どんな夏袴下なのでしょう。
この「夏袴下」が即ち昭和10年代に登場する夏袴下と同一かは不明ですが、13年の給与令改正は「部分的に貸与される被服」から「支給品」への格上げだったと判断する材料になりそうです。
昭和4年以降の文書でもちらほら「夏袴下」は登場しますが、准士官以上の物について書かれた物がほとんどの為いまいちその姿が捉えられません。しかし、夏袴下というものは一貫して海軍の中に存在していた事は分かります。いつから、の答えは出ませんでしたが…。レポートなら再提出待ったなしですね。
※「倫敦海軍会議随員付下士官被服ノ件」及び一連の文書は、同会議随員付下士官3名(横須賀/笠神佐一郎一等主計兵曹・呉/中岡隆彦一等機関兵曹・佐世保/花田保一等兵曹)に対し、『会議ノ性質上相当容儀ヲ正サシムル必要アルノミナラズ途中酷暑地経由ノ関係上特殊ノ被服ヲ要』すことから被服の繰上交換及び貸与を行う事を取り決めたものです。(彼らの3名ともが三線善行章・高等術持ちです。随員付に選ばれるだけあって優秀な下士官だったのでしょう。)




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Posted by 宇佐見 寛永  at 23:01 │Comments(0)海軍

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